理事長挨拶
実験動物病理組織標本作製技術懇話会としてスタートした本会は、それまで各施設内での活躍が主であった実験病理標本作製技術者の技術・知識の向上や技術者間の交流の場を設けることを目的として、1982年に発足いたしました。その後、1992年に実験病理組織技術研究会[The Japanese Association of Histotechnology (JAH)]と改称し現在に至っております。実験病理組織標本作製技術者のための国内唯一の組織として、会員の皆様はもとより、多くの関連企業の皆さまからも賛助会員としてご支援を頂き活動しております。
年間事業としては、総会・学術集会、技術研修会、コントロールサーベイ、テクニカルミーティング、実技講習会および資格認定試験を実施してきておりますが、2024年からは、技術研修会を新たなイベントへ統合することとし中止させて頂いております。また、1996年には毒性病理学会の後援を頂き、実験病理組織技術認定士の資格認定制度を導入いたしました。2011年には上位資格として実験病理組織技術指導認定士を導入し、2024年現在、技術認定士223名、指導認定士31名の方が取得されております。
実験病理組織標本作製は、国内外を問わず、医薬・農薬開発、薬理あるいは毒性研究など様々な研究機関で実施されております。組織標本の良し悪しで病理評価あるいは研究結果が左右されると言っても過言ではなく、高い技術が求められます。さらに近年では、イメージング技術や組織切片を用いた解析技術の発展により、組織標本作製に求められる技術が益々高まり、且つ多様化しております。
一方で、組織標本作製に関わる機器の充実、免疫組織化学やin situ ハイブリダイゼーションのキットや自動化、各種染色キットのラインナップの増加により、ある程度の技術・知識があれば容易に染色標本を作製できる時代になっております。
しかしながら、パラフィン包埋がうまくできない、切片が切れない、染まらないなどの事象あるいはアーティファクトが起こった際に、早急な対応や原因究明に至ることが可能でしょうか。染まらない原因は固定不良かもしれません。切片が切れないのは脱水不良かもしれません。切片のメス傷は微小な石灰化かもしれません。組織標本作製は、毎回順調に実施できるとは限らず、トラブルの対処能力も重要となります。
実験病理組織技術研究会では、各種イベントや会員各位の交流を通して知識や技術の向上を目指していく所存です。標本作製の基礎技術向上には実技講習会、染色技術の確認にはコントロールサーベイ、アーティファクトの解決あるいは相談にはテクニカルミーティング、皆様の技量確認には資格認定試験など、ご参加ください。
2024年6月の総会を持ちまして新たな役員体制となりました。新役員一同、更なる会の発展を目指して活動して参ります。今後ともご支援・ご協力いただければ幸いです。
実験病理組織技術研究会
理事長 中野 健二